日本文学・写真史(修士/京都大学)
美術大学受験における小論文は、単なる文章力の試験ではありません。そこで求められるのは、「思考する力」と「言語化する力」を通じた創造的かつ批評的な表現力です。特に、美術という「見えないものを形にする」営みと接続する小論文では、以下のような力が重視されます。
①「美とは何か」「アートは社会とどう関わるか」といった正解のない問いに対して、自分の考えを持ち、論理的に展開できる力。
②与えられた資料や課題文を鵜呑みにせず、多面的に考察し、意味を深掘りし、自分の意見の根拠や背景を言葉で説明する、批評的思考力。
③芸術的なイメージを、「美しい」や「すごい」といった印象だけでなく、なぜそう思うのかを説明第三者に伝わる明快な文章に置き換えて伝達する創造的な表現能力。
④自分が何に惹かれ、なぜそれを表現したいのか、将来的なアーティストとしてのビジョンや問題意識を明確に言語化できる、高い自己認識力。
⑤近現代美術・思想・文化への知的な関心や背景知識、また、それに基づいて自分の表現がどんな時代性や美術史的流れに与するものかを意識する力。
美術系大学で小論文が課される背景には、現代芸術において「思考する力」と「言語で表現する力」が極めて重要になっているという認識があります。
例えば、著名なフランスのキュレーターである二コラ・ブリオーは、『関係性の美学』(辻憲行訳、水声社、2023年)や『ラディカント:グローバリゼーションの美学に向けて』(武田宙也訳、フィルムアート社、2022年)において、現代アートは単なる視覚的オブジェクトではなく、社会的関係性や文化的文脈との対話を通じて意味を持つものであり、そこでは、言語と理論が重要な役割を果たしていると論じています。現代の美術表現は、環境、ジェンダー、政治など、複雑な社会的・文化的課題と接続されており、作品を生み出すアーティスト個人のみで完結するものではなく、作品を読み解きその意味を拓くキュレーターや批評家、芸術にかかわる研究者との協働によって成立していることも忘れてはなりません。その意味で、作品の社会的・歴史的な位置づけを理解し、他者に向けて伝える言語能力は、芸術に携わるすべての人にとって不可欠です。
小論文はまさにその力を測るための試験です。美術大学における小論文は、学生の知的素養や探究心、創造的思考の基礎を見極めようとするものであり、つまるところ、「考え、語れるアート人材」を選ぶための重要な選抜手段なのです。
本講座では、入試対策にとどまらず、将来の表現者・デザイナー・キュレーター・芸術研究者等、アートに携わって生きていくために必要な、言語によって「思考を深める力」と「伝える力」を育みます。課題文や図像の分析を通じてテーマを掘り下げ、自分の意見を論理的に構築する訓練を重ねながら、入試本番に強い力を養うだけでなく、本質的な、言葉による表現力と批評的思考を磨きます。
・高品質な添削クオリティ:
美学・芸術学の大学院でアカデミックなトレーニングを積み、芸術に関わる今日的なトピックやさらにそれを深堀りする学術理論に造詣の深いスタッフが、ハイレベルな美術系小論文を書き上げるために必要なポイントについて、的確な指摘と改善案を提示します。
・1課題につき2回の添削:
一つの課題につき添削を2度繰り返すことで、良質な解答を作成するために必要な考えを定着させ、思考力・記述力を高めます。「書ききった」という実感が自信を養い、試験本番でのパフォーマンスを高めます。
1.お申込みフォームに必要事項をご記入の上送信
2.ライトから送付されるお支払い情報と面談日時を確認
3.お支払い後、Google Classroomに参加いただき、Google Meetにて、志望校・使用教材について30分程の面談
4.講師から第一回目の課題を提示
・多摩美術大学、武蔵野美術大学、東京藝術大学など、小論文が必要な美術系大学を志望する受験生
・解答を一通り書ききれるが得点に伸び悩んでいる方
・自分の作品や思考を「言葉で表現する力」を強化したい方
志望分野の過去問題に取り組み、月2課題に取り組み、各課題につき月2回の添削を行うことで、精度の高い解答作成力を養います。添削は最短3日で返却します。使用テキストは受講者の志望大学等相談の上決定します。
1. 志望校・志望分野のヒアリングにより課題を決定
2. 課題1の出題
3. 課題1の一次解答提出(Word形式)+課題2の出題
4. 課題1の一次添削の返却&課題2の一次解答提出
5. 課題1の二次解答の提出&課題2の一次添削の返却
6. 課題1の二次添削の返却&課題2の二次解答の提出
7. 課題2の二次添削の返却
・「アートと社会について、800字以内で自由に述べなさい。」(2023年度多摩美術大学美術学部芸術学科・一般選抜)
・「芸術文化における自由の意味についてのあなた自身の考えを、具体的な事例や自身の体験を交えながら、本文と関連付けて1,000字以内で述べなさい。」(2023年度武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科・一般選抜)
日本文学・写真史(修士/京都大学)
早稲田大学第一文学部卒。東京の広告会社勤務後、京都大学大学院人間・環境学研究科にて文学・美学を学ぶ。 専門は日本近代文学ですが、美術写真集の翻訳・写真展の企画・芸術大学での非常勤講師(写真史)・映画制作など、いろいろなことに首を突っ込んできました。 長年受験参考書の編集および執筆に携わり、近年では難関大総合型選抜における志望書・小論文の添削および面接指導を多数担当し、上智大学・立教大学・同志社大学などの合格者を生み出してきました。